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桜蔭会富山支部総会 講演「テレビドラマ・ヒットの秘訣」



講師  布施 実氏 プロフィール

1948年黒部市生まれ。

桜井中学・富山高校卒業後、

早稲田大学法学部へ入学。

1971年NHK入局。富山放送局へ赴任。

その後東京へ転勤。

長年に渡りドラマ番組の制作と演出に携わる。


NHKでの主な演出・制作番組 大河ドラマ「武田信玄」「いのち」、朝の連続テレビ小説「澪つくし」

「ええにょぼ」、新大型時代劇「宮本武蔵」、土曜ドラマ「蛇蝎のごとく」、ドラマスペシャル「ポーツマスの旗」、「ホンコンドリーム」、「聖徳太子」など。単発ドラマ「我等の放課後」で文化庁芸術祭優秀賞受賞。大阪放送局芸能部長を経て、2001年に富山放送局長。

NHK退職後は、関連団体へ転籍し、NHKエンタープライズアメリカ社長(ニューヨーク)などを歴任。退職後は富山市に転居。「富山県イメージアップ戦略アドバイザー」に就任し、イベント、催事などのアドバイザーを務めている。2015年3月の「エンジン01戦略会議」では富山県側プロデューサーを務めた。


NHKのドラマ作りとは


 私は、41年間NHKと関連団体に勤めましたが、そのうちの25年がドラマ作りで、大河、朝ドラ、単発などいろいろな種類のドラマを作りました。今、大河は、「平清盛」以降不調が続き、現在放送中の「花燃ゆ」は清盛に次ぐ視聴率が低い状況です。NHKはいつも質の高いドラマ作りを求められますが、私は「花燃ゆ」は中味が良くてとてもいいドラマだと思っています。が、視聴率につながらない理由を考えてみますと、今回はキャスティングが地味ではないのか、真面目を得意とするNHKは、もう少し面白く見せるエンターテインメント性が必要ではないのか、中味がよいだけではヒットにはつながらないのではと思っています。ドラマは、企画、脚本、キャスティング、スタッフ、いろんな要素がかかわって、ヒットするかどうかということになります。来年の大河をプロデュースするのは富山出身の人で、NHKの起死回生なるかという重要な役目を担っています。「軍師官兵衛」をプロデュースした人も富山の人で、今3人ものプロデューサーが富山県出身ということで、ドラマ部では富山は首都圏以外では大派閥です。


「あまちゃん」から朝ドラ絶好調


NHKの上層部からは、大河と朝ドラを当てろと言われています。その理由は、大河と朝ドラが当たっている時は受信料収入がいいからです。現場は当てようとものすごく努力をしているのですが、うまくいく場合もあれば、ヒットにつながらないこともある。朝ドラ89作品中一番ヒットした作品は、

最高視聴率 ①おしん 62.9% ②旅路 56.9% ③おはなはん 56.4%

平均視聴率 ①おしん 52.6% ②繭子ひとり 47.4% ③藍より青く 47.3%

大ヒットした「おしん」は、初め台本を読んだ時に、こんな暗いドラマは絶対に当たらないと皆で言っていました。片や「君の名は」は大ヒット間違いないと思っていました。大がかりなオープンセットも作ったのですが、あまりヒットしなくて話題にもなりませんでした。当たると思ったのが当たらなくて、当たらないと思ったものが当たるということで、蓋をあけてみないとわからない。ヒットの秘訣はありそうでないというのが結論です。

「おしん」は女性のサクセスストーリーで、タイトルに「ん」が付くと当たるというジンクスがあります。朝ドラは女性のサクセスストーリーが多いのですが、大きく3パターンにわかれます。①女性の半生記、一代記、戦争など時代の動きを取り込める ②女性の職業を描く。 ③女性の関心事(夫婦、親子、教育、単身赴任など)をホームドラマとしてきめ細かに描く。視聴者は女性が大半なので、女性に共感を持って  

見てもらえるということを大切に作っています。

私が演出した「澪つくし」は、内容は、演劇「ロミオとジュリエット」 映画「ひまわり」という世界の古典を基にした物語性の強いドラマです。また、私が制作した朝ドラ最後の視聴率40%超えと言われている「ええにょぼ」はハートの暖かい女医さんの話です。研修医を経て、ようやく一人前の医師になって最初の癌告知が自分の父親であったというドラマの大きな骨格を思いついた時、156本の脚本作りができると思いました。朝ドラは良く障害物レースと言われます。その障害をどうやって、どのような情熱で乗り越えていくか、それが楽しみです。また、新人のヒロインの役者がどのように成長していくのか、その役者としての成長の過程を見ていただけるのが楽しみでもあり魅力の一つとなっています。


ドラマ制作への思い


 私は富山出身で、NHKでの最初の赴任地が富山で、最後が局長として富山にきたという極めて稀なケースです。ひじょうに恵まれていたと思います。高校時代から映画が好きで、映画を作りたいと思っていましたが競争が激しく、いよいよこれからはテレビの時代だという時だったので、NHKに入り、ドラマ作りをやりたいと思っていました。朝ドラや大河など現場での演出の仕事をしていましたが、43歳のときの病気を機に現場でものを作る監督ではなく、企画を考える、台本を作る、予算管理をするという管理系の仕事をするプロデューサーに路線変更しました。大きな転機で、病気をしなければまだ現場でドラマの演出をやっていたかもしれないと思っています。NHKはドラマ制作の現場の意見を尊重してくれるので、上からとやかく言われることはなく、基本的にプロデューサーと演出家の二人ですべてを決めることができる、とてもドラマ作りに適したいい会社だと思っています。


大河ドラマ


 今年の「花燃ゆ」までの53作品のなかで視聴率が高かった作品は、

 最高視聴率 ①赤穂浪士 53% ②武田信玄 49.2% ③独眼竜政宗 47.8%

 平均視聴率 ①独眼竜政宗 39.7% ②武田信玄 39.2% ③春日局 32.4%

 初回最高視聴率 ①武田信玄 42.5%


ということで、私が演出をした「武田信玄」がすべてに入っています。初回の視聴率を聞いた時はみんなぶったまげました。何故、政宗と信玄の視聴率が高かったかという理由は、その前の近代三部作があまりパッとしなかったからです。それ以前の大河は、①信長・秀吉の戦国時代 ②忠臣蔵を中心とした、家康の江戸時代 ③幕末・明治維新 の3パターンの繰り返しをやっていました。それをやめて近代三部作に挑んだのですが、あまり芳しくなく、大河はやはり時代劇だと元に戻したのが政宗と信玄だったわけです。幕末は当たらないという大河のジンクスもあります。幕末は、新しい国の方向をめぐって思想が絡んで皆議論ばかりして難しい話になるからかもしれません。大河からは「おのおのがた」や「梵天丸もかくありたい」等の流行語も生まれました。そこまでいくと番組も社会現象ということになります。

 大河は豪華絢爛のキャストがいい芝居をして、それを皆様に堪能してもらう。大河は予算にも恵まれ、セットは大きく豪華なものです。「武田信玄」では、合戦シーンでNHK歴史上最高数の馬60頭を使いました。それ以降は20頭くらいでコンピュータグラフィックによる映像合成で3倍に見せています。60頭も使えて幸せでした。演出をやっていて楽しいのは大河です。朝ドラは90分、大河は45分を同じ3日間のスタジオで撮るのです。演出家にとって朝ドラは大量生産で、大河はその半分の45分を3日間で撮ればいいので時間もたっぷりあり、芸術が出来るのです。NHKで「武田信玄」の演出をしたことが一番楽しかったです。演出家の仕事とは、現場で役者さん達に芝居をつけ、いい芝居をいい映像で作り上げることです。NHKでは必ず本番前日に皆集まってリハーサルをします。せりふや動きなど演出家のイメージを役者に伝え、議論しながら芝居を固め、そして3日間かけて収録します。そのシステムが残っているのはNHKだけで、もの作りの原点が残されています。信玄の時は、平幹二朗さんがいろいろアイデアを出して下さって、過去を振り返るシーンで日本刀に自分の姿を写したいと言われ、うまくいきますかねと言いつつやってみたら物凄くうまくいきました。以来大河では毎年日本刀に写すシーンがでてきます。私が初めてやったことです。


いい作品を作るには


 大切なことは、このドラマで見ている人に何をメッセージとして伝えようか、しっかりしたメッセージがあるかどうかということ。何をどうしたいのか制作者側に志がしっかりあることです。制作者の思いと志を持っていないとキャストもスタッフもついてきません。また番組には、何か新しいところ、something newがどこかにあるというのも肝要です。そういう視点を持って作る。ありきたりのままではなくいかに個性的であるかということも大切なような気がします。


今後は


 9月「風の盆恋歌」の朗読劇、10月「大伴家持」の音楽朗読劇、作曲家三枝成彰さんによるイタリア語版のオペラ「Jr.バタフライ」の日本初上演が来年1月に富山県民会館であります。それらのプロデュース・演出をする予定です。



 

編集後記

 NHK富山局長時代、職場で御一緒だった茂木景さんが司会進行をしてくださり、なごやかな雰囲気のなか興味深い話題を質問形式を交えて楽しくお話ししてくださいました。会員の皆様からも次々と質問がでて、ひとつひとつ丁寧にお答えくださいました。あっという間の1時間15分でした。

Y・K

平成27年6月14日 於 高志の国文学館


講演を聴いて

 長年NHKのドラマ制作に携わってこられた方の講演ということで、どんなお話が聞けるのか楽しみにしていましたが、講演の内容は期待した以上に興味深いものでした。特に大河ドラマと朝ドラに焦点を絞ってお話しくださったので、その両方を欠かさず見ている私には興味のあることばかりでした。「ドラマがヒットするかしないかは蓋を開けてみないとわからない」という言葉は意外でしたが、具体例を挙げられるとなるほどと思わせられ、NHKドラマの二枚看板を担当された時のご苦労を想像しました。

 ご自身が担当された「武田信玄」や「澪つくし」「ええにょぼ」の制作裏話も交えながら、ドラマ制作のポイントをわかりやすくお話しくださり、時間を忘れて聴き入りました。

 帰宅後に見た「花燃ゆ」が一段と興味深く感じられました。制作者の熱意と視聴者に伝えようとしているものを感じ取りながら、今後もNHKのドラマを見続けたいと思います。

A・U


 




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